日本における漁業生産量は減少傾向が続いており、持続可能な魚介類の供給への懸念が強まっている。本研究では、持続可能な魚介類の供給へ貢献することを目的に、内陸県の一つである埼玉県における地域資源を活用した陸上養殖の検討を行った。検討を始めるにあたり、陸上養殖の一般的な課題を調査したところ、陸上養殖に関する技術、コスト、魚種の選定・付加価値、経営アプローチ、飼料開発などが挙げられた。各課題に対するこれまでの陸上養殖の事例や埼玉県の特徴の調査を行った結果、意外にも埼玉県は陸上養殖に適した地域であると考えられた。具体的には、空き家や廃校などを陸上養殖の施設として活用することや、埼玉県で生産される果物を餌として活用した魚介のブランド化、陸上養殖設備事業者による陸上養殖への参入支援や、既存の交通インフラを活用した魚介類の輸送など、埼玉県の地域資源を活用した陸上養殖について提案する。