2022 年 21 巻 p. 14-27
本稿は、コンピュータグラフィックス(CG)を用いて制作された画像の児童ポルノ該当性が争われた訴訟を手がかりに、CGで描かれた人物の実在性・本人特定性といった被侵害主体の認定に関わる法理を検討したものである。被写体児童の実在性を要求する日本の児童ポルノ規制においては、児童本人を特定できない場合に、児童の実在性をどう立証するかという手法に課題がある。さらに、ディープフェイク、バーチャルヒューマンなど、現実の姿態と見紛うほどに写実的な画像・動画をCGで表現する技術の発達により、画像・動画上の表象そのものから、描かれた人物の実在性を立証することがより困難となっている。そのような状況を踏まえ、CGによる人物表現の法的評価に関する本訴訟の射程と今後の課題を指摘した。