2020年には、電子署名法における同法の電子署名の概念や推定効の意味について政府から公表されたいわゆる2条Q&A、3条Q&Aをはじめとして、熱心な議論がなされた。しかし、それらの内容は、制定時における比較法的な分析について配慮がなされていない。制定時において十分な比較法的な分析がなされていたことから、電子署名の解釈は、国際的な定めと整合性に注目してなされる必要がある。その場合に、署名者から分析がなされるべきこと、3条の本人とは、署名者をいうこと、推定効については、UNCITRAL電子署名モデル法の4要件の解釈と整合的な解釈がなされるべきこと、電子署名の概念は、実在人との同一性の論点は含まないこと、が特徴となる。もっとも、現在においては、電子取引における実在人と同一性の確認に関する法的規制等についての議論のほうが有益である。