抄録
むちうち損傷による難聴例13例に対し, 血管拡張剤及び筋弛緩剤併用の牽引療法を3~6ヵ月間行い, 治療前後の純音聴力検査及び頸性純音域値変動現象(CTS)の成績を比較して治療効果を検討した. 結果は次の通り.
(1)正中頭位の感音性難聴とCTSとしての感音性難聴が同型障害像であつた6例8耳(難聴の原因が頸部にあると診断できる)では, CTSの消失のみならず正中頭位の難聴も改善.
(2)正中頭位とCTSとの難聴が異型障害像であつた7例8耳(正中頭位の難聴は頸部と無関係であると診断できる)ではCTSのみ消失.
以上のことから次の結論を得た.
1)対象13例16耳のむちうち損傷に起因した純音聴力障害は全例改善と見なせる. その治療の限界は上述(1)及び(2)とすべきである.
2)CTS検査は頸部に起因する感音性難聴の範囲を診断する上だけでなく. 治療効果の判定と治療の限界決定上にも重要な所見を与える.