抄録
現在の糖尿病食事療法は, 肥満過食を防ぐため, 標準体重を維持する程度のカロリー制限を厳重に守り, 同時に栄養素のバランスをとることに細心の注意を払うこと, 食事摂取を3回以上に分け, その度毎にその食品の質量を同じくすること, インスリンや経口剤による薬物治療の際に, 糖質の配分が血糖値の円滑な調節に役立つ, 日本人の食生活は食品の種類が多種類にわたるが, これに即して日本糖尿病学会編医師栄養士患者にすぐ役立つ糖尿病治療のための食品交換表が, 医師, 栄養士, 患者のテキストとして最適である.
そして個人の患者に食品交換表を理解させると共に, 体重, 血糖値, 合併症の推移を見ながらきめのこまかい根気のよい治療の指示が医師に期待される. 病状の増悪に際しては, 薬物の増量より, まず食事療法の乱れについて検討することが肝要で, 患者に対する食事, 運動などについての教育こそ糖尿病治療の基礎である.