抄録
61才, 男子, 農業. 昭和49年10月11日, 胃がんの診断のもとに上正中切開で開腹したが, 切除不能で診断的開腹術に終つた.
術後はがん化学療法を行つていたが, 約9ヵ月後に上正中切開瘢痕下に硬結を触知し, さらに硬結による圧迫感や疼痛を訴えるようになり, X線検査で腹壁内に異常骨陰影が認められた. 昭和50年11月11日, 開腹創瘢痕内異所性骨形成の診断で, 硬結の摘出術を行つたが, 硬結は皮下脂肪層, 左右両腹直筋, 腹膜に囲まれ, 剣状突起よりは完全に遊離して存在し, 大きさは8.5cm×1.5cm×0.5cmであつた.
組織学的には骨髄を伴う骨組織の新生が認められた.
患者は昭和51年1月13日, 悪液質のため死亡したが, 瘢痕内の骨形成の再発はみられなかつた.