抄録
我々は最近, 14才, 男性で, 感冒罹患後の一過性呼吸困難を主訴とする, 右大動脈弓, 大動脈憩室(左背側大動脈幹第8分節遺残), 左鎖骨下動脈起始異常を伴つた不完全型血管輪(Edwards IIIB型)の1症例を経験した. 精査の結果, 手術の必要はないと考え, 今回, 手術は行わなかつた. しかし血管輪は比較的希な疾患であり, 且つ, この症例の臨床経過, 胸部X線写真, 大動脈造影, 気管支鏡検査などで興味ある所見が得られたので報告する. またこの症例は, 自覚症状を有する血管輪の手術適応を考える上でも興昧ある症例であると思われる. 血管輪の中には, ここに述べる症例のごとく, かなりの自覚症状があつて一見, 手術適応ありと考えられるような症例でも, 検査をしてみると案外, 解剖学的変化が軽く手術適応外のものもあると考えた次第である.