医療
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脳血管撮影時における背景波の変動と脳血行動態について
田口 薫滝本 洋司堀部 邦夫金城 孝赤木 功人越野 兼太郎佐藤 武材
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1977 年 31 巻 2 号 p. 112-118

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抄録
脳血管撮影時における生理学的な影響に関しては, いまだ不明な点が多い. 脳血管撮影時に, 脳波と同時にECG, 注入時間, 伝播時間, 頸動脈圧, 頸動脈脈波を測定すると, 脳波には一過性のFlattening, Slowing, Low voltage fastなどがみられ, これらと脳血行動態との相関について検討した. 注入圧により脳血管が急激に拡張され, つづいて脳血管の収縮がおこると考えられ, この時期とFlatteningの時期が一致すると思われる. 一方注入時の血流はほとんど造影剤のみとなり, Hypoxemiaの状態になつており, 脳血管収縮の影響と重なり, 脳はHypoxiaの状態になつていると考えられ, この時期とSlowingの時期が一致すると思われる. 注入直後のVagotoniaと脳波変化とは直接関係はないと思われる. CAGとVAGの間に血行動態の差が認められたが, 灌流領域の差と造影剤によるVasodilatationが考えられる.
脾臓の膿〓について
脾膿瘍について剖検例と臨床例について, その頻度, 死亡原因, 起因菌, 診断, 鑑別診断, 治療, 合併症などについて記している.
1952年から1974年の間にJohns Hopkins Hospitalで剖検された症例は16,199件で, このうち脾膿瘍は23例(0.14%)であつた. 抗生剤出現前の同疾患の頻度は0.41%で, 抗生剤出現後は1/3に減少している. 各症例の直接死因は敗血症で, 剖検によつて発見された膿瘍は一般に多発性である. すなわち23例中18例(78%)は多発性であつた. 膿汁の培養ではStaphylococcus, Candida, Nacardia, Pseudomonasがみられた. この脾膿瘍は免疫学的に防御機構の減弱した患者にみられ, 23例の91%は白血病, 膠原病, 悪性腫瘍, 糖尿病, 慢性消耗性疾患を有していた.
1952年から1974年の間に同院で臨床的に脾膿瘍の診断がつけられたものは5例あり, これに文献上の22例を加えた27例について臨床例として検討した.
臨床所見は発熱, 左上腹部痛, 脾腫大, 胸部X線像で左下肺野の異常影, 白血球増多が主なものであるが, その診断は極めて困難で, 膵および胃の膿瘍, 消化管病変の穿孔, 横隔膜下膿瘍などとの鑑別を要する. 治療は抗生剤の投与と脾摘である. 27例のうち24例は脾摘出術をうけ, 3例は脾切開術をうけている. 膿瘍内容物の細菌学的検査ではStrheptococcus, Staphylococcus, Salmonella, Coliformなどであつた.
合併症としては腹腔内, 消化管内, 胸腔内, 気管支内に破裂することがあり, また結腸閉塞, 腹壁外への瘻孔形成を来すことがある.
臨床的に診断のつく脾膿瘍は一般に孤立性で巨大であることが多い. (表5, 文献43)
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© 一般社団法人国立医療学会
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