抄録
咳, 痰を主徴とする心不全症状を呈する63才の男子で, 心電図にて完全右脚プロツク, 左軸偏位, P-Q延長を示したので, 心内膜床欠損型の心室中隔欠損を疑い, 左室造影を行い, 膜性部心室中隔瘤と診断した. 年長者ではあつたが, 56%の左, 右短絡を示し, 心不全症状も認めたので手術にふみきつた. 手術は容易で, 術後経過も良好で, 術前NYHA III度の患者はI度にまで回復し, 元気に復職した. 年長者の心室中隔欠損は症例そのものが少なく, 手術例も極めて少ない. 本症例は心室中隔欠損と膜性部心室中隔瘤の手術報告例においては, 最年長に属すると思われる.