医療
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33 巻, 5 号
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  • 第II編 高山病の病理学的観察
    中村 善紀, 宮澤 健, 井口 欽之蒸, 北原 昇, 松尾 俊彦
    1979 年 33 巻 5 号 p. 445-452
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    日本において高山病は通常3,000m以上の高度で登山者におこるが, 低地へ移送することによつて迅速に症状は改善され治癒するので, 本邦での剖検例は全く報告されていない. 当病院は海抜600mの地にあり, 日本アルプス最寄りの松本市にあるため, 毎年数名の本症患者が入院して数日間で軽快退院している. 最近2例の死亡者があり, 剖検の機会があつたので報告する.
    症例1 23才 女 槍ケ岳(3,179m)に登頂し高山病にかかり, 低酸素血症, 錐体路徴候, 昏睡に陥り, 発病11日後に死亡した. 剖検では回復期の肺浮腫, 多数の出血巣, 肺胞内の硝子化した滲出物を認め, 脳で神経膠細胞増殖を伴う脳白質の血管周囲病巣を認め, 点状出血が多数認められた.
    症例2 16才 男 唐松岳(3,100m)に登り高山病となる. 低酸素血症, 錐体路徴候, 昏睡を示し, 発病後5日で死亡した. 剖検では心疾患によらない著明な肺浮腫, 脳白質に限局した血管周囲性脱髄と出血が特異的であつた.
    2例とも同じような臨床経過と, 肺浮腫と出血並びに脳白質の浮腫と点状出血を示した.
  • 阿部 英治
    1979 年 33 巻 5 号 p. 453-464
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    最近, ジストロフイー症の筋以外の組織においても形態的のみならず, 酵素活性や細胞内膜構造についても異常を示唆する報告が相次いでいる. 本論文は遺伝的ジストロフイー症マウス肝のミクロゾームを使用した実験において, 薬物の水酸化反応および脂質の過酸化に関与する酵素系の活性が上昇していること, また, 抽出した全脂質にはリゾレシチンの含有量が正常のものより増加していることを述べている. さらにジストロフイーミクロゾームにおいて, 薬物の水酸化反応が高活性を示した理由を検討した結果, NADPH-チトクロムC還元酵素の活性が高いことが知られた. しかし, 本酵素はその比活性の点からみて, 水酸化反応の律速段階となり得るかどうかについて疑問が残つた. 一方, りゾレシチンは膜の透過性や膜に結合する酵素の活性に重大な影響力をもつことがしられているので, ジストロフイーマウス肝ミクロゾームでは薬物の水酸化反応の活性が高かつたのはこの点に由来する可能性が考えられた.
  • 伊藤 廣, 小泉 潔, 立野 育郎
    1979 年 33 巻 5 号 p. 465-469
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    癌の細胞性免疫能のパラメーターとして, 臨床の場で簡単に実施し得るPPDおよびPHA両皮内反応, 末梢血リンパ球絶対数の3者を用い, 癌の治療中におけるこれらの推移を検討した. 3者の中では, リンパ球数の消長が病態との相関が最も良好であつた. すなわちリンパ球数を1,000以上と未満に分けると, 正常者コントロール群では, 1,000未満を1例も見ないが, 癌患者群では, 治療前16.3%, 治療中38.1%, 治療後48.9%と治療によつて1,000未満の比率の増加が見られた. 更に病態改善群と悪化・死亡群の2群に分けてみると, 両群とも治療中では1,000未満の比率が増加するが, 治療後では, 前者が36%にとどまるのに対し, 後者では66.7%が1,000未満に低下しており対照的であつた. 治療中における治療法の見直しの手がかりとして, 末血リンパ球絶対数を使うことは, 単に白血球数の増減を見る以上に有意義と考えられる.
  • 山口 宗彦, 矢島 寿夫, 加藤 二郎, 森 博志, 窪田 叔子, 川上 仁
    1979 年 33 巻 5 号 p. 470-476
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    従来のシエーグレン症候群の診断基準では, sicca syndromeの有無が主体になつているが, sialometryによる唾液分泌量は経時的変動が大きいこと, また口内乾燥感が自覚症状として発現するまでには発症後かなりの経過を要することから, sicca syndromeを間接的に, しかも早期にとらえる方法として, 唾液腺造影の重要性を強調した.
    本症では, 1)点状陰影を示すものと 2)斑紋状, 雲状陰影を示し導管に漏洩像を示すものとに大別される. また本症を, 他の膠原病非合併例(A群)と合併例(B群)とに分類して臨床所見, 検査成績などから検討した結果, それぞれの群において数多くの特徴的所見が認められている.
    すなわち我々が考えている診断基準では, 1)唾影像(特に耳下腺)にみられる特徴的所見と, 2)免疫血清学的所見(高ガンマグロブリン血症, リウマチ因子陽性など)の存在を重視している.
  • 小野 陽二, 石川 滋, 市川 公穂, 永山 和男, 江沢 暁彦
    1979 年 33 巻 5 号 p. 477-482
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    膀胱腫瘍(移行上皮癌)の脳転移は比較的希であるが, 著者らは興味ある経過をたどつた1症例を経験し, 剖検する機会をえたので, 若干の文献的考察を加えて報告する.
    症例は49才男子, 計算力低下, 頭痛で発症し, 4回にわたる開頭術により転移性腫瘍を強く疑いながらも, 胸部レ線写, 全身R. Iスキヤン, 静脈性腎盂撮影, 胃透視・内視鏡検査, 耳鼻科, 泌尿器科的検査を施行しても, 原発巣を確認することができなかつた. また手術に, 60Co照射やPIC, MEX, FT207などの化学療法を併用したがいずれも有効と考えられず, 約1年半の経過ののち死亡した. 剖検では, 膀胱に移行上皮癌を認め, 腎, 肝, 脳に多発転移巣を認めた. 従来報告された症例はいずれも膀胱症状が先行しているのに反し本症例は脳巣症状で発症し, 血尿, 排尿痛, 排尿障害などの膀胱症状を欠き, 比較的珍しい症例と考えられた.
  • 蜂須 賀彬夫, 荻野 幹夫, 古谷 誠, 浅井 春雄, 村瀬 孝雄, 小杉 雅英
    1979 年 33 巻 5 号 p. 483-486
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    骨巨細胞腫瘍で同一骨に多発した例は極めて希であり, 現在までに3例をみるにすぎない. 我々の症例は, 右橈骨, 腓骨に各2ヵ所の病変を来院時にX線検査にて認め, 手術時組織学的検索でも, 各の病巣部に骨巨細胞腫が存在していることを確認した症例である. これらの多発性病変は, (1)本例は最終的に肺転移を起して死亡し, 肺転移部の組織診断は悪性骨巨細胞腫であつた. (2)各病変は同時発生ではなく, 腓骨近位骨端部より生じたと思われることより, 腓骨から脛骨に転移し, さらに, 骨髄内転移を生じたと思われた.
  • 松村 長生, 大塩 猛人, 平井 勉, 斉藤 恒雄, 角田 一己, 桐野 有成, 高丸 誠志, 松岡 寿子
    1979 年 33 巻 5 号 p. 487-490
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    頸部大動脈弓は数例報告されているが, 心内合併奇形を有するものは非常にまれである. 我々は右鎖骨上窩に突出した大動脈弓に単心室, 肺動脈狭窄を合併した1例を報告した. 患者は2ヵ月の女児で, 生来呼吸困難あり, 心雑音を指摘され香川小児病院に紹介された. 心臓カテーテル, 大動脈造影により頸部大動脈弓及び, 食道後部大動脈弓と診断され, 呼吸困難, 嚥下困難は食道後部大動脈弓による圧迫と診断した. 血管輪の切断を要すると思われたが, 心内奇形の根治性なきため, 家族の同意が得られず, 6ヵ月間内科的治療で待つたが, 体重増加なく, 6ヵ月後に動脈管索の切断術を行つた, 術後の体重増加もえられ, 良好であつたが2ヵ月後風邪に罹患し突然死亡した. 本邦においては本例を入れ7例の報告がみられる. 7例のうち4例に心内奇形の合併を認め, 欧米の報告に比して心内奇形の合併が多い.
  • 林 勝知, 下野 達宏, 河合 寿一, 白井 直樹, 大友 一夫
    1979 年 33 巻 5 号 p. 491-494
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    我々は最近比較的希な非特異性多発性小腸潰瘍の1症例を経験したので報告する. 患者は36才の女性. 18年前から全身倦怠感, 貧血, 浮腫を認め2ヵ所の病院で治療を受けたが, 少々症状が軽減するのみであるため, 本院受診した. 入院後検査所見で, 著明な貧血, 低蛋白血症, 便潜血強陽性を認め, 消化管のX線検査で下部小腸に多数の潰瘍と憩室を認めた. そこで非特異性多発性小腸潰瘍の診断のもとに盲腸約10cmと回腸約150cm切除した. 切除標本では, 15カ所に輪走斜走する浅い潰瘍があり, またその周辺に25ヵ所の偽憩室を認めた. 病理組織では, 腸結核やCrohn病にみられる所見は認められず, 特殊性炎を思わせる所見は認められなかつた. 術後経過は良好で, 術後小腸造影にて潰瘍を認めず, 術後第13週目に退院した. 本症は諸家の報告にあるように再発しやすい疾患であるため, 今後十分に経過観察していきたいと思つている.
  • 宮 哲正, 大谷 直人, 井上 恒一, 尾上 保夫, 森島 明, 鈴木 五郎, 森本 和大
    1979 年 33 巻 5 号 p. 495-499
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    咳, 痰を主徴とする心不全症状を呈する63才の男子で, 心電図にて完全右脚プロツク, 左軸偏位, P-Q延長を示したので, 心内膜床欠損型の心室中隔欠損を疑い, 左室造影を行い, 膜性部心室中隔瘤と診断した. 年長者ではあつたが, 56%の左, 右短絡を示し, 心不全症状も認めたので手術にふみきつた. 手術は容易で, 術後経過も良好で, 術前NYHA III度の患者はI度にまで回復し, 元気に復職した. 年長者の心室中隔欠損は症例そのものが少なく, 手術例も極めて少ない. 本症例は心室中隔欠損と膜性部心室中隔瘤の手術報告例においては, 最年長に属すると思われる.
  • 浅野 次義, 片岡 喜久雄
    1979 年 33 巻 5 号 p. 500-502
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    Radiation myelopathyは1941年Ahlbomによつて報告されて以来, 外国では200例以上, 日本では60例以上の報告がある. われわれはリンパ上皮腫の患者(51才, 男)で12カ月おきに1カ月間ずつ2700rad, 3200rad合計5900radの上咽頭ライナツク照射を行い, 初回照射後24カ月目に左下肢に温痛覚障害・運動障害・病的反射が出現した. さらにそれが上行性・両側性に進展し排尿障害も併発し肺炎にて死亡した. (今後Radiation治療が増加するであろうがmyelopathyも起ることも考慮しなければならない.) Radiation myelopathyの1例を経験したので報告する.
  • ―臨床経過ならびに胎盤処理を中心として―
    島 功, 岩渕 照男, 門間 俊彦, 森塚 威次郎, 赤間 二郎, 山田 千里, 並木 恒夫
    1979 年 33 巻 5 号 p. 503-506
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    腹膜妊娠における治療の要点は胎盤処理法にあり, 処置いかんによつては母体の危険性も極めて大きい. 本症例は, 妊娠初期より子宮外妊娠を疑いながらも確診し得ず, 末期に至り胎内死亡を来し開腹により腹膜妊娠と判明した. 胎盤処理は開放性胎盤残置法を採用, 後再開腹により二次的胎盤摘出に成功し術後の経過は良好である. 今回, 自験例における妊娠経過, 匪腹時所見, 術後経過, 再開腹時所見ならびに摘出胎盤所見をとおして, 妊娠末期の腹膜妊娠における胎盤処理問題に関して若干の考察を行つた.
  • 浅野 千代子, 三浦 準
    1979 年 33 巻 5 号 p. 507-508
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    対応異常を有する斜視の治療には, 過矯正手術が効果的であると考えられている. 今回我々は, 対応異常を示した外斜視2例を経験した. 1例は術後過矯正眼位を示したものであり, もう1例は低矯正の残余斜視角をフレネル膜プリズムで過矯正眼位にしたものである. 我々は, これら2例に対して視能訓練を試み満足する結果を得たることができたので報告する.
  • 東村 道雄, 外山 春雄, 深谷 勇二
    1979 年 33 巻 5 号 p. 509-513
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    アルカリ処理した喀痰を中和しないで, 渦巻白金耳(1白金耳で0.02ml接種できる)で小川培地に接種する方法は, 中和した喀痰をピペツト(0.1ml接種)でLöwenstein-Jensen培地に接種する方法よりも培養陽性率が高い. 中和しない喀痰を, 渦巻白金耳で小川培地に接種する方法と, ピペツトで小川培地に接種する方法とは, 同じ培養陽性率を示す.
    接種量の多いピペツト接種法が,接種量が少ない渦巻白金耳接種法と同じ培養陽性率を示し, しかも, 喀痰中の生菌数が少ない場合にピペツト接種法の陽性率がやや劣ることは, ピペット接種法で生菌数の過小評価が起つていることを示す. 従つて, ピペツト接種法は, 生菌数の定量的測定には適さない.
    渦巻白金耳法がピペツト法にまさる原因は, 少量の接種液を均等に培地にすりこむことにより, 速やかに中和が起ること, 及び「すりこみ」の操作が菌の発育を助けることが考えられる.
  • 蜂須 賀研二, 野町 昭三郎, 浅葉 義一
    1979 年 33 巻 5 号 p. 514-517
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    国立療養所村山病院, 国立塩原温泉病院に入院した脊髄損傷患者50名(男性40名, 女性10名)に対し, 性に関する面接調査を施行した. 男性では70%に勃起を, 20%に射精を認める. 麻痺のタイプでは, 勃起:上位完全麻痺>不全麻痺>下位完全麻痺, 射精:下全麻痺>下位完全麻痺>上位完全麻痺, の関係が認められる. 月経は閉経に達していない女性全員に存在する. 性生活に関心のあるものは78%, 愛情, 結婚生活を願つているものは80%であるが, 性生活を希望するものは男性78%, 女性40%と性別による違いを認める. 子供をつくりたいものは7名, 性生活の指導をうけたいものは26名いる. 脊髄損傷のリハビリテーシヨンの一分野として, 性機能障害にアプローチをこころみる必要がある.
  • ―前半・後半の比較―
    三木 直二
    1979 年 33 巻 5 号 p. 518-521
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    四国地方がんセンター開設以来10年間に, がん登録された患者を前半後半にわけて比較検討した(全症例6,846例).
    臓器別登録数では, 男性は前後半共胃・肺の順であつたが, 後半直腸が第3位となつた.
    女性は前後半共子宮・胃・乳房・直腸の順であつたが, 後半大腸の増加が目立った.
    年令別登録数では, 男性は70才以上の高令者の占める割合が後半有意の差で増加を示した. 女性はその割合が有意の差とならず, 性ホルモンの影響を受ける子宮がん・乳がん患者を除いた数値でも, 有意の差が出なかつた. すなわち, 女性では男性程後半老令化傾向が著しくなかつた.
  • 5. 微小胃癌における内視鏡診断の進歩
    吉田 茂昭, 河村 譲, 岡 裕爾, 平嶋 登志夫, 吉森 正喜, 小黒 八七郎
    1979 年 33 巻 5 号 p. 522-523
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
  • 1979 年 33 巻 5 号 p. 524-525
    発行日: 1979/05/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
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