医療
Online ISSN : 1884-8729
Print ISSN : 0021-1699
ISSN-L : 0021-1699
多発硬化症の1剖検例
西川 喜作大嶺 繁二鹿島 晴雄川上 仁御園 生正紀
著者情報
ジャーナル フリー

1981 年 35 巻 4 号 p. 349-352

詳細
抄録
36才, 女, 主訴は悪心・嘔吐, 複視及び歩行障害. 34才時発症. 全身倦怠, 悪心・嘔吐, 吃逆で始まり胆石症と診断された. その後6回の再発, 寛解を繰り返し2年の経過の後死亡した. いずれも悪心・嘔吐が出現し, 複視, 顔面神経麻痺を伴つたが, 最後は脳神経III, IV, VI, VII, VIII, IX, の障害が, 左右差はあつたが両側に見られた. また小脳症状, 錐体路症状と共に性格変化, 知能障害, 感情鈍麻なども加わり, 大脳の局在も想定された. 解剖所見では, 大脳, 中脳, 小脳, 橋脳, 延髄の広範囲に多発性に病巣が見られた. このうち最も変化の強い場所は脳幹部であり, 大脳には小指頭大病巣が前頭, 脳梁及び後頭葉にそれぞれ1つずつ見られた. 小脳病巣は1ヵ所だつたが, 橋小脳路が障害されていた. 脊髄及び視神経には異常を認めなかつた. 脳幹部にある主病巣はいずれも境界不鮮明であつた.
著者関連情報
© 一般社団法人国立医療学会
前の記事 次の記事
feedback
Top