抄録
耳鳴およびその治療効果に及ぼす心理的因子を解明する目的から, 135例の耳鳴症例を対象に, 耳鳴に対する執着度と治療効果に対する満足度を指標として検討した.
135例中25例では耳鳴が実際に存在せず, 耳鳴検査も実施できず, 単なる心理的反応がもたらす誤感であることが証明され, 無難聴性耳鳴例に有意に多かつた.
耳鳴への執着度は耳鳴の大きさに無関係で, 個々の症例で強さがまちまちであり, その違いが治療効果への満足度を左右していた.
強度執着例では, 治療効果の程度と関係なく, 大満足か不満かの両極端に偏りやすく, 中等度執着例では軽度改善に対する満足度がまちまちであるのに対し, 普通執着例では効果と満足度の程度が一致していた.
このことから耳鳴の診断や治療には心理的因子への考慮か極めて重要であることが判明した.