1988 年 42 巻 12 号 p. 1176-1178
皮膚筋炎に肝病変を合併することはまれである. 私たちは, 皮膚筋炎に急性肝炎を合併し, さらに電顕上肝内giant mitochondriaを認めた症例を経験したのでここに報告する. 症例は57才女性. 主訴は掻痒を伴う皮疹と筋力低下. 入院時, 胸部・左上下肢に紫色の皮疹と眼瞼にheliotrope疹を認め, 左腋下にリンパ節を触知し, 肝脾触知せず, 筋力は近位筋優位の低下を認めた. 飲酒歴, 輸血歴なし. 主な検査としては, 赤沈亢進, CRP(+), RF(+), GOT・GPT・LDH・CPK上昇. 筋生検では筋炎の像, 肝生検では急性肝炎消退期の像であり, 電顕上giant mitochondriaを認めた. また, giant mitochondriaの局在も, グリソン鞘周辺や小葉実質内に多く, むしろ小葉中心帯には少なかつた. 本例は自己免疫疾患における肝内giant mitochondriaの存在と, その局在の特性が何らかの因果関係を示唆するものと思われ若干の文献的考察を加え報告する.