抄録
経上腕動脈性下に選択的超選択的カテーテル操作を行い, DSAで撮影することを原則とする血管造影法(TB-SDSA)を29例の肝癌患者に80回(28回は外来で, 52回は入院下で)試み, 肝癌の診断・治療における役割について検討した. 選択的超選択的カテーテル操作はガイドワイヤーを併用することによつて97.5%に目的の達成が得られた. 手技に基づく多大な副作用は全例に認められず, また同検査に強い苦痛不満を訴えた患者も皆無であつた. 全例(27例)に肝癌巣が顕著な腫瘍濃染像として検知し得た. 特に11例(40.7%)では1cm径以下の微小な肝癌巣が単発性または多発性に検知し得た. そのうちの9例は肝内転移巣で, 2例は早期肝癌であつた. この早期肝癌は外来で検知し得た. 治療的応用も従来法と同様に可能であつた. TB-SDSAは今後肝癌の早期診断や治療に新たな臨床検査法になり得ると考えられた.