抄録
当院の慢性呼吸不全患者に在宅酸素療法(HOT)を施行し, その有用性および問題点を検討した. 本療法の対象となつた32例のうち, 開始後1年以上経過した19例について, 施行前後の肺機能値・血液ガス値を比較した. その結果%VCは軽度低下するが, 室内気吸入下でもPaCO2の上昇なしにPaO2が上昇するのが観察された. また, 酸素療法の生体に対する短期および長期的影響を調べる目的で, 右心カテーテル検査を施行した. その結果, 検査症例数は少ないが, 短期・長期とも平均肺動脈圧および心係数が低下する症例が多く認められた. 酸素投与後, 短時間での肺循環諸量の改善はこれまでの報告と同様であるが, HOT開始前後に右心カテーテル検査を施行することにより, 長期的にも循環諸量が改善する症例が多いことがわかった. また, HOT開始2年間に4例が死亡したが, いずれも基礎疾患の増悪によるものであつた.