医療
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外傷後脊髄空洞症について
柴崎 啓一矢加部 茂竹尾 貞徳前川 宗一郎吉田 康洋池尻 公二
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1990 年 44 巻 2 号 p. 136-142

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抄録

7例の外傷後脊髄空洞症の経験をもとに本疾患の概要を紹介し, 併せてその病因及び治療法について文献的な考察を行つた.
7症例の内訳は男性4例, 女性3例であり, 損傷から発症までの経過期間は1.5年から22年であつた. 不全脊髄損傷例が5例と多く, 合併脊椎損傷では脱臼あるいは脱臼骨折はなかつた. くしやみあるいは怒責を契機とした発症例が3例あり, 全例に解離性知覚障害と運動障害が麻痺域上部及び上肢帯に主として片側性に認められた. 診断にはdelayed CTM及びMRIが有用であつたが, 中でもMRIは空洞の存在確認並びに手術高位の決定だけでなく, 術後効果の判定にもきわめて有効であつた.
本疾患の発症には脊髄損傷部における部分的髄膜癒着に伴う髄液還流障害が関与すると考え, 治療法は空洞内除圧と髄液循環改善を目的として損傷部を中心とした頭・尾側2方向へのクモ膜下腔シヤント術を選択した. 術後成績はきわめて良好であつた.

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