1990 年 44 巻 2 号 p. 148-152
近年開発された細胞分裂前期あるいは前中期核板での高精度分染法は, 従来の分染法の数倍の解像力があり, 微細な染色体異常を同定することができる. 最近, 高精度分染法を用いてPrader-Willi症候群(PWS)と15番染色体長腕部分欠失の関係が明らかにされつつある. 今回, われわれはPWSの確定例および疑診例について高精度分染法を用いて15番染色体長腕部分欠失の有無を検討したので報告する. 結果は, PWSと確定した2例およびPWSが疑われる乳児3例のすべてに15q 11.2の欠失を認めた. PWSにおいて15q 11.2の欠失が高頻度に認められることは, PWSの病因の一つとして染色体異常が関与していることを強く示唆するものと考える. また, 染色体分析により, PWSの確定診断が新生児期あるいは乳児期早期より可能となり, その後に出現する肥満や糖尿病の予防に役立つとおもわれる.