1990 年 44 巻 2 号 p. 159-162
神経症症状とくに強迫, 退避あるいは抑うつ感情などをともなう適応障害は, 社会的要因にも助長されて増加し, それは若年令層のみでなく, 中・高年令層にまで及んでいる. その背後には, 親と子の和解の未解消が多くみられ, 事例に示した適応障害のほかにも, 精神科諸疾患一般に多かれ少なかれかかわりをもつている. 和解の問題は従来から論議の集積は多いが, 今日, ことに強く再考が求められている.
本稿では事例をあげ, これにかかわる問題の検討を行い, また, 近年の関連諸領域, 言語学, 人類学, 精神病理学などのもたらした示唆にもとづき, 和解とそれに伴う苦渋や犠牲について, 遡って原型を求め, さらに, 和解の意義を若干異なつた視点から考察し問題の提起を行つた.