1990 年 44 巻 8 号 p. 794-799
慢性呼吸不全を含む慢性肺疾患患者について, 肺血行動態と血液ガス所見(77例)および12分間歩行試験前後の血液ガスとα-hANP濃度の変化(55例, 80回)を検討した. 肺結核後遺症では肺動脈圧高値, 心係数低値, 慢性気管支炎では肺動脈圧高値, 心係数も高値であり, 慢性肺気腫や肺線維症では肺動脈圧の上昇は軽度であつた. 低酸素血症の機序として肺結核後遺症では肺胞低換気が, その他の群では換気血流比不均等が主因とおもわれた. 12分間歩行試験では, 歩行距離は634±133mで, Pao2は歩行後約16 torr低下し, その低下度は心係数および肺拡散能が低いほど高度であつた. 歩行後のα-hANP濃度は, 歩行前に比較して有意に上昇し, その増加度は歩行後の低酸素血症が著しいほど大であつた.