1990 年 44 巻 8 号 p. 831-834
基礎疾患として悪性腫瘍を有し, 臨床的にDICと診断され, 同時にSDHを合併した4例を経験した. 症例1は37才女性. 胃全摘(スキルス)1年後, 急速に意識障害をきたし, 亜急性SDHを認め, 3日後死亡. 症例2は45才男性. 腰痛にて通院中, 突然の意識障害をきたし, 大脳半球裂間に急性SDHを認め, 翌日死亡. 症例3は54才女性. 皮下出血斑にて入院中, 進行性の意識障害をきたし, 慢性SDHを認め, 血腫除去するも5日後死亡. 症例4は77才男性. 真性多血症で入院中, 見当識障害が進行し, 慢性SDHを認め, 血腫除去するも全経過24日で死亡. 以上全例, 経過が急速で予後が悪かつた. また3例は組織学的にadenocarcinomaであり, 2例に硬膜転移を確認した. 文献的に胃癌で硬膜転移していることが, DICを合併したSDHの発症に重要であり, その発生機序として, 腫瘍細胞の硬膜転移を引き金としたlocal DICの概念が示唆された.