1990 年 44 巻 8 号 p. 835-840
外傷性小脳内血腫は比較的まれであるが, CTの普及とともに報告がふえてきている. 我々は1984年から1989年までに7例の外傷性小脳内血腫を経験した. 受傷機転は, 交通事故3例, 転落4例であり, 受傷部位は, いずれも後頭部であつた. 入院時の意識状態が, Glasgow coma scale (GCS)で3~10であつた4例は, 小脳内血腫や合併脳損傷により死亡した. GCSが15であつた2例は, 保存的治療を行い, GCSが12であつた1例は, 外科的治療を行つた. これら3例はいずれも良好な経過をたどつた. 外傷性小脳内血腫は, しばしば天膜上病変や脳幹部損傷を伴い, このような場合はきわめて予後不良と考えられた. 一方合併損傷が軽微で血腫が小さい場合は, 保存的治療で充分と考えられた. また意識清明期があり, その後症状を呈してくる遅発型は, できるだけ早く充分な減圧手術が必要と考えられた.