医療
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遠心ポンプによる一時的バイパスを補助手段とした解離性胸部下行大動脈瘤手術
深田 義夫津田 洋増田 裕乾 浩三先山 正二佐尾山 信夫吉田 冲
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1990 年 44 巻 8 号 p. 841-845

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抄録

De Bakey III b型慢性解離性胸部下行大動脈瘤手術の補助手段として遠心ポンプによる一時的バイパス法を用い有用であつたので報告する. 症例は61才, 男, 胸部下行大動脈起始部にentry, 腎動脈分岐部にre-entryのある最大横径55mmの解離性大動脈瘤で, II度の大動脈弁閉鎖不全を合併. 左心房脱血, 遠心ポンプにて左総大腿動脈送血. 回路は途中にシート型貯血槽を付けた塩化ビニールチユーブを用いた. entryを含め下行大動脈を切断し, 断端を補強し, woven dacron, low porosity人工血管にて置換した. 大動脈遮断中は1.1~1.8l/分の血流量で, 平均上肢および下肢血圧はほぼ等しく, 尿量は良好で, 腎, 肝, 脊髄障害は発生しなかつた. 遠心ポンプは流量調節が容易で, 遮断末梢側の血流量が十分確保でき, 流量は末梢血管抵抗に反応して変化し, ヘパリン投与は少量でよく, 心後負荷軽減効果もある. 一時的バイパス法としては第一選択となる方法である.

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