抄録
肝内門脈肝静脈短絡を合併したルポイド肝炎の1剖検例を報告する. 症例は85歳の女性, 輸血歴・外傷歴なし. 5年前に自己免疫性肝炎と診断されたがステロイド療法は受けなかった. 肝硬変が疑われ, 肝精査を目的に入院した. 抗核抗体・抗DNA抗体・LE細胞現象が陽性で, 超音波検査にて肝左葉に多房性の嚢胞性病変を認めた. 門脈左枝からの流入血管・左肝静脈への流出血管とパルスドップラー法にて病変内部の血流を確認し, 肝内門脈肝静脈短絡と診断した. 剖検にて短絡部には筋層と弾性線維層が存在し, 内皮細胞も確認された. 周囲の血管には血栓や搬痕の形成は認められなかったが, 肝実質にはルポイド肝炎による乙型肝硬変が証明された. 短絡部の病理組織学的検討からは先天性と考えられたが, その臨床経過からは後天性の可能性も完全には否定しきれなかった.