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脳梗塞における髄液中神経伝達物質の変動に関する臨床的研究
山田 謙慈杉山 一彦藤田 浩史井上 圭太郎
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1992 年 46 巻 8 号 p. 592-602

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抄録

脳機能を生化学的に反映すると考えられる髄液中の神経伝達物質とその代謝産物を測定し, 神経学的所見などと対比することによりそれらの物質の変動を評価し, これにより有効な治療法の開発に寄与できると考えた.
方法:1990年より1991年の間に当院を受診した脳梗塞14例に脊髄穿刺を行い, それにより採取した髄液中の神経伝達物質を測定した.
結果:1) 皮質枝領域の脳梗塞急性期症例において, Dopamine, Homovanillic acid, 5-HIAA, cyclic AMP, cyclic GMPの著明な増加が認められた. これらの結果は, 従来の動物実験における結果とほぼ一致するものである. また, HVAの増加を伴うDopamine代謝回伝率の低下は, 予後不良と考えられた. 2) グリシンとアラニンの変化には正の相関があること, グルタミン酸値の上昇は穿通枝領域の梗塞においてより顕著であること, また慢性期の痴呆の出現と関連があること, などが示唆された.

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