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旧石綿鉱山および工場周辺住民にみられた胸膜肥厚斑
平岡 武典弘雍 正島津 和泰大蔵 正則手島 安廣瀬戸 口啓介
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1992 年 46 巻 8 号 p. 603-610

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抄録

熊本県松橋町で40歳以上を対象にした肺癌検診において, 357名の受診者の148名(41.5%)に胸膜肥厚斑がみいだされた. これらの胸膜肥厚斑に胸膜のみにみられる硝子化肥厚斑および石灰化肥厚斑であり, その胸部X線写真像の特徴からして石綿曝露による胸膜所見が最も考えられた. 148名のうち問診のとれた88名中12名(13.6%)に石綿職歴を持つ人がいたが, 多くは近隣曝露または環境曝露と考えられた. 40歳代には少ないが, 50歳代より急に出現頸度が高かった. 男女間に差はなかった. 翌年6肺癌検診では胸膜肥厚斑の有所見者は1,747名中185名(10.6%)であった. また, 同町の15歳以上を対象にした結核検診では21,689名の中で529名(8.4%)であった. この町の肺癌の標準化死亡比は男性は0.62, 女性は1.26であった. また, この地区で過去15年間に悪性中皮腫の症例は報告されていない. 分析電子顕微鏡による, 主な鉱山の鉱石の分析結果は角閃石族のアンソフィライトであった.

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