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進行性IgA腎症に対するステロイドパルス療法の有効性
吉村 光弘木田 寛斉藤 弥章渡辺 麒七朗杉岡 五郎
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1992 年 46 巻 8 号 p. 657-663

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抄録

進行性IgA腎症例に対するステロイドパルス療法の有用性を検討するために, 1日1.09以上の蛋白尿が3ヵ月以上にわたって持続し, 腎生検により10%以上の糸球体に半月体の存在が確認されたIgA腎症の12例に, methylprednisolone 1日1000mg連続3日間の点滴静注を2回実施し, 同時にprednisoloneを初期量として20mg併用し, 前後で尿蛋白量・糸球体濾過量(GFR)・腎組織病変を対比した. 1日尿蛋白量は, 治療前の2.4±0.4(1.0~5.5)gから, パルス療法後には1.2±0.3(0~3.0)gへと減少し, 12例中10例で有意な減少を認めた(p<0.005). 同時にGFRは70±10(31~15)ml/minから78±10(34~134)ml/minへと上昇した(p<0.05). また, 治療前の半月体形成は31±6(10~57)%の糸球体に認められ, かつこのうちの42±7(10~75)%が疾患活動性を示す細胞性半月体により占められていたが, 治療後の細胞性半月体は10例ではまったく認められなくなり, 他の1例でも75%から33%へと著しく減少した. prednisoloneを5~10mgにまで漸減して尿蛋白の推移をみたところ, 8.6±0.9(6~15)ヵ月後にも減少効果は持続して認められた. ただし3例では, 5, 6, 8ヵ月以後から増加傾向を示し, 治療前値に復した. 本研究により, IgA腎症に対するステロイドパルス療法の速効的有効性が裏付けられるとともに, ステロイドの少量維持投与により寛解を維持できることが判明した.

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© 一般社団法人国立医療学会
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