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ACTH単独欠損症に低レニン性低アルドステロン症を合併し, 著明な低ナトリウム血症を呈した1例
岡田 一義高橋 進
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1994 年 48 巻 11 号 p. 939-944

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抄録

ACTH単独欠損症に低レニン性低アルドステロン症を合併し, 著明な低Na血症を呈した1例を経験し, グルココルチコイド投与後もなお尿中Na喪失が持続したにもかかわらず, 血清Na濃度が正常域に復した興味ある所見を得たので報告する. 症例は57歳, 男性. 悪心, 嘔吐, 全身倦怠感を主訴に来院し, 傾眠傾向を認めたため緊急入院となった. 血清Na濃度の著明な低下(114mEq/l), かつ, 血清コルチゾール濃度・尿中17-OHCS排泄量の低下も認めたため, 副腎皮質刺激試験および下垂体刺激試験を施行し, ACTH単独欠損症と診断した. 経口塩分摂取量を増加させ, 酢酸コルチゾン(50mg/日)による治療を開始後, 血清Na濃度は正常域に復した. 治療前後で高張食塩水負荷試験を施行したところ, 治療によりADH過分泌による水利尿不全は改善したが, なお低レニン性低アルドステロン症と尿中Na喪失は持続していた. ACTH単独欠損症における著明な低Na血症は, グルココルチコイドとミネラルコルチコイドの両者の欠乏により発症し, グルココルチコイド補充後はミネラルコルチコイド欠乏状態が存在していても経口塩分摂取量を増加させることにより, Naバランスは維持可能であると思われた

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