日本臨床薬理学会学術総会抄録集
Online ISSN : 2436-5580
第44回日本臨床薬理学会学術総会
セッションID: 44_3-C-P-B1
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一般演題(ポスター)
日本人関節リウマチ患者におけるバイオ医薬品に対する抗薬物抗体の評価と臨床的影響に関する検討
*柴田 寛子西村 和子塚越 絵里石井 明子齋藤 嘉朗山田 壯一増岡 正太郎廣瀬 恒川合 眞一南木 敏宏
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抄録

【目的】関節リウマチ(RA)の治療には,その高い治療効果から,様々なバイオ医薬品が用いられている.バイオ医薬品は有効成分がタンパク質であるため,免疫原性を示し,投与後に抗薬物抗体(ADA)が産生される場合がある.ADAの産生は,血中半減期の短縮や薬理作用の阻害による有効性の低下,免疫細胞活性化による有害反応等につながる可能性があるため,臨床試験におけるADA陽性率や中和活性の評価を含め,適切なリスクマネジメントが必要である.しかし特に国内において,免疫原性に影響する臨床的要因である投与経路や併用薬,さらには患者のHLA型等の影響も考慮した免疫原性に関する情報は十分ではない.本研究では,バイオ医薬品を投与されたRA患者血清中のADAを測定し,ADA陽性率および抗体価と関連する因子について検討した.【方法】RA患者血清中のADAの測定には,電気化学発光法を用い,スクリーニングアッセイ及び確認アッセイにより陽性・陰性判定を行った.細胞応答性試験法によりADA陽性検体中の中和活性を評価した. ELISA法により血清中の遊離薬物濃度を測定した.【結果・考察】バイオ医薬品を投与されたRA患者197例(インフリキシマブ27例,アダリムマブ14例,ゴリムマブ22例,トシリズマブ71例,エタネルセプト 63例)から血清試料を収集した.確認アッセイでADA陽性と判定された検体数は,インフリキシマブ5例,アダリムマブ4例,ゴリムマブ5例,トシリズマブ5例,エタネルセプト 44例で医薬品により陽性率に違いがあった.明確な中和活性を示す検体は認められなかった.アダリムマブ投与患者では,メトトレキサート非併用群の方がADA陽性率が高かった.抗アダリムマブ抗体陽性検体の血清中遊離薬物濃度は陰性検体より低い傾向があり,ADAの存在により医薬品の消失が高まっている可能性が考えられた.抗トシリズマブ抗体陽性検体はすべて皮下投与群であり,点滴静注群はすべて陰性であり,投与経路によるADA陽性率の差異が確認された.ADAとHLAの関連解析では,エタネルセプト投与患者に関し,関節リウマチのリスクアレルにおいてADA陽性検体の頻度が高い傾向が認められた.【結論】バイオ医薬品を投与された日本人RA患者血清中のADAの評価を行い,ADA陽性率を明らかにした.ADA産生に影響する臨床的要因を考察した.

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