1998 年 52 巻 4 号 p. 257-260
通常Wernicke脳症に急性小脳腫脹を伴うことはない. 急激なチアミン欠乏が小脳腫脹をもたらしたと思われるWernicke脳症を経験した. 症例は52歳男性, 軽度の意識障害と歩行障害を主訴に入院. 糖質輸液を受けたが, 食餌処方がなされていたためビタミンB1の意識的投与がなされず症状増悪し昏睡, 四肢麻痺, 全外眼筋麻痺となった. ビタミンB1の大量療法を行い治癒した. CT, MRIで急性小脳腫脹が認められ, HMPAO-SPECTでは視床や小脳にhyperemiaを示すと思われる高集積像がみられた. チアミン欠乏に対して視床と同様に小脳もきわめて脆弱であるものと思われた.