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溶血性尿毒症症候群(HUS)散発例10例の細菌学的, 臨床的検討
庵原 俊昭中野 貴司北村 賢司神谷 齊
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1999 年 53 巻 11 号 p. 698-702

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抄録
溶血性尿毒症症候群(HUS)散発例10例を経験し, 細菌学的, 臨床的特徴について検討した. 10例中9例は抗大腸菌ムコ多糖体(LPS)抗体が陽性であり, 7例は抗ベロトキシン(VT)抗体が陽性であった. HUS発症誘因の大腸菌の型は, O157が7例, O165が1例, O18疑いが1例, 不明1例であった. 臨床的特徴では顔色不良, 下痢, 発熱が主たる症状であり, 血便, 腹痛はO157によるHUS発症群(O157群)に多く認められた. 検査成績の異常では低蛋白血症, 電解質異常の割合がO157群で高かった. O157群の2例では腹膜透析による治療を必要としたが, その他の8例は抗凝固療法を中心とする支持療法で症状は改善した. また, 入院期間はO157群の方がその他の型により発症した群に比較し長い傾向を認めた.
以上の結果から, HUS散発例の原因菌の70%はO157感染であり, O157感染によるHUS発症例の方が重症化する傾向が認められた.
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