抄録
臨床医学における多変量解析の応用はコンピュータの進歩と普及にともなって, 飛躍的に増大している. 判別分析は, 診断や治療上の意志決定に適当な手法であるため, 適用例も他の多変量解析に比べて多い. 著者は, 肝臓病の診断にコンピュータを利用した判別分析を1967年に応用し, 限定した情報ではコンピュータの診断は医師診断に勝る結果を得た. その後1990年から, トレッドミル診断に判別分析を応用し, prospective studyでも利用できる可能性を示した. 心拍やST-T変化などの自動計測で, トレッドミル診断の簡便性, 正確性, 普遍性が期待できる. 文献的考察ではトレッドミル診断の客観性を求めての多くの報告を紹介し, また, 判別分析の多方面の応用を示した. 判別分析の臨床医学における応用は多くの疾患の診断に可能であり, また, 治療効果や予後の予測などにも適用されていることを示した. 今後も臨床医学における広汎な新しい応用が期待される