胸腔には, 胸水産生・吸収の平衡に起因するpleural liquid pressure(Pliq)という陰圧がはたらいている. この陰圧は肺を胸腔で完全膨脹させるに要する圧よりもmore negativeと実測, 報告されている. したがって臓側, 壁側胸膜は, 物理的なある力で相接しており, この圧をpleural contact pressure(Pcont)という. pleural surface pressure(Ppl), 肺内圧(開口)Pawo, 肺弾性収縮圧Pel(1)とし, これらの圧の相互関係(静的状態)は, Pawo=Ppl+Pel(1)=Pliq+Pcont+Pel(1)となる. Pplは部位による差があり, その原因として重力や, 胸腔と肺の形の相違, 肺の固定などがあげられている. その際の圧の相互関係の理解は, Pcontを考えに入れることにより容易となる.
Pliqは実測されているが, 胸水産生・吸収のメカニズムについては今なお研究, 議論されている. Starlingの式を基にした説明, 報告があるものの, 式としてPliqは示されていない. 著者はある小さい胸膜間間隙への胸水産生・吸収を想定し, 毛細血管の動脈より, 静脈より, の各部分にStarlingの式を適用し, 同時に, 濾過係数, リンパ系吸収を考慮したPliqの算出式を導いた. この関係式から各因子のPliqへの影響を推測できる
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