医療
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53 巻, 6 号
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  • 六田 暉朗
    1999 年53 巻6 号 p. 375-379
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    胸腔には, 胸水産生・吸収の平衡に起因するpleural liquid pressure(Pliq)という陰圧がはたらいている. この陰圧は肺を胸腔で完全膨脹させるに要する圧よりもmore negativeと実測, 報告されている. したがって臓側, 壁側胸膜は, 物理的なある力で相接しており, この圧をpleural contact pressure(Pcont)という. pleural surface pressure(Ppl), 肺内圧(開口)Pawo, 肺弾性収縮圧Pel(1)とし, これらの圧の相互関係(静的状態)は, Pawo=Ppl+Pel(1)=Pliq+Pcont+Pel(1)となる. Pplは部位による差があり, その原因として重力や, 胸腔と肺の形の相違, 肺の固定などがあげられている. その際の圧の相互関係の理解は, Pcontを考えに入れることにより容易となる.
    Pliqは実測されているが, 胸水産生・吸収のメカニズムについては今なお研究, 議論されている. Starlingの式を基にした説明, 報告があるものの, 式としてPliqは示されていない. 著者はある小さい胸膜間間隙への胸水産生・吸収を想定し, 毛細血管の動脈より, 静脈より, の各部分にStarlingの式を適用し, 同時に, 濾過係数, リンパ系吸収を考慮したPliqの算出式を導いた. この関係式から各因子のPliqへの影響を推測できる
  • ―判別分析を中心として―
    廣田 滋
    1999 年53 巻6 号 p. 380-386
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    臨床医学における多変量解析の応用はコンピュータの進歩と普及にともなって, 飛躍的に増大している. 判別分析は, 診断や治療上の意志決定に適当な手法であるため, 適用例も他の多変量解析に比べて多い. 著者は, 肝臓病の診断にコンピュータを利用した判別分析を1967年に応用し, 限定した情報ではコンピュータの診断は医師診断に勝る結果を得た. その後1990年から, トレッドミル診断に判別分析を応用し, prospective studyでも利用できる可能性を示した. 心拍やST-T変化などの自動計測で, トレッドミル診断の簡便性, 正確性, 普遍性が期待できる. 文献的考察ではトレッドミル診断の客観性を求めての多くの報告を紹介し, また, 判別分析の多方面の応用を示した. 判別分析の臨床医学における応用は多くの疾患の診断に可能であり, また, 治療効果や予後の予測などにも適用されていることを示した. 今後も臨床医学における広汎な新しい応用が期待される
  • ―敏感度・特異度の向上を目指して―
    原 幸子, 林美 恵子, 今関 ひろみ, 大谷 一, 三宅 和夫, 松下 幸生, 高橋 久雄, 樋口 進, 村松 太郎
    1999 年53 巻6 号 p. 387-391
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    ヒトにマイコプラズマ肺炎をおこす病原微生物であるMycoplasma pneumoniae(以下M. pneumoninae)は, 培養がむずかしく時間もかかり, 診断は血清学的検査に頼っているのが現状である. 小児では時に髄膜炎や脳炎をおこすことがあり, M. pneumoninae感染症を迅速に診断することは, 無用な抗生剤の投与を防ぐ意味でも大変重要である. 今回, われわれはnested PCR法にてM. pneumoniaeの検出を試みた. nested PCR法には, 菌数がかなり少量でも検出できるという利点があるが, 非特異反応もおこりやすくなる. われわれは特異性をあげるためにM. pneumoniaeの細胞中に多数存在する16 SrRNAをコードするDNA部分(可変領域)を増幅させるプライマーを開発し, これを新たに加えることでM. pneumoniaeの2ヵ所の部分を増幅することができた. これらは特異性, 感度ともに十分満足ゆくものであった. 本nested PCR法は1日あれば結果を出すことができ, 迅速診断として実用的と考えた
  • 田中 和子, 富川 盛光, 飯倉 洋治, 赤澤 晃, 斉藤 博久
    1999 年53 巻6 号 p. 392-397
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    キウィフルーツ摂取によりI型アレルギー症状を呈した9名の患者血清を用い, キウィフルーツ主要抗原の同定とcharacterizationを行った.
    キウィフルーツより抽出した粗抗原を用いたimmunoblot法により, 患者血清全例と反応する30KDのキウィフルーツ蛋白質を確認した. この蛋白質を硫安塩析とHPLCによるゲルろ過クロマログラフィーにより精製し, αカゼインに添加し37℃で反応後, αカゼインの変化をSDS-PAGEにより検討した.
    その結果, αカゼインのバンドは経時的に分解され消失した. このことより, キウィフルーツ30KD抗原は蛋白分解能を有する蛋白分解酵素である可能性が示唆された.
    この性質は食肉軟化剤や消化剤への利用が可能であり, 食物として摂取される場合のほかにも隠れたアレルゲンとしての注意が必要と思われる
  • 村松 淳, 山田 実, 佐藤 健二, 伊藤 弘子, 木村 真, 酒井 広隆, 山崎 英樹, 斎藤 秀光, 千葉 達雄, 澁谷 治男, 栗原 ...
    1999 年53 巻6 号 p. 398-401
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    我々は発症早期のアルツハイマー病におけるMRIの形態学的特徴に関して検討した. アルツハイマー病を軽度痴呆群(12例)と中等度痴呆群(12例)の2群にわけて, 頭部MRIによる側脳室下角体積および海馬体積を健常者(14例)と比較した.
    軽度痴呆群は健常群に比べ側脳室下角体積が大きかったが, 海馬では差がなかった. 軽度痴呆群と中等度痴呆群で側脳室下角体積で差がなかったが, 海馬体積は中等度痴呆群が軽度痴呆群に比べ小さかった. 中等度痴呆群は健常群に比べさらに側脳室下角体積が大きく, 海馬体積が小さかった. したがって, 発症早期のアルツハイマー病の補助的診断として, 海馬よりも側脳室下角のほうが有用であることが示唆された
  • 高山 隼人, 米倉 正大, 吉田 優子
    1999 年53 巻6 号 p. 402-406
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    救命救急センター・に入室する患者のMRSAの感染・保菌状況を調査し, さらに治療経過中および退出時のMRSA感染・保菌についてprospectiveに調査した. 対象は1996年9月より1998年3月までに入室した患者に対して入室時および退院, 転院, 転棟時(以後, 退棟時)に鼻腔もしくは気管内のMRSA検査を行った. 19ヵ月間の入院患者数は, 996例であった. 入室時MRSA陽性患者は27例(2.7%)で, 退棟時陽性患者は33例(3.3%)であった. 治療経過中に陽性化した患者は31例(3.1%)であり, 多発した時期の15例の菌種を検討すると3時期で2例づつがほぼ同一菌種であった. 入室時MRSA陽性患者はすべて治療歴があり, 入院経過中MRSA陽性患者は重症で長期抗生剤使用患者に多く3例が交叉感染と考えられた. 感染者の隔離や区域化の徹底により交叉感染の多発化が予防できていた. 入室時保菌患者として, 院内転入例や呼吸器感染症を有する紹介患者に多く, 今後もMRSAのhigh risk groupとして対応するほうがよいと思われる
  • ―ステージ化の試み―
    小長谷 正明, 堂前 裕二, 小笠 原徹, 久留 聡, 松岡 幸彦
    1999 年53 巻6 号 p. 407-410
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    筋強直性ジストロフィー(MyD)20例の四肢機能障害の進展課程を10年間にわたって追跡した. MyDの移動能力を8段階起居能力と巧緻性を主とした上肢能力(16例)をそれぞれ4段階にstage化し, 変化を検討した. 移動能力stageの平均は初回測定時2.7±1.7(M±SD), 最終測定時5.7±2.1, 起居能力Stageは初回2.0±1.1, 最終時3.3±1.1, 上肢機能は初回1.4±0.8, 最終時1.9±1.1であり, いずれも有意に進行していた(いずれもP=0.000, by wilcox test). 移動能力と起居能力は経過とともに低下する例が多数みられ, 下肢骨折や一般状態悪化が契機となることが40~45%みられた. 上肢機能stageは, 16例中11例は進行を示さず, 移動能力・起居能力Stageより良好な経過で推移していた. MyDの医療・療養では, 骨折や合併症の予防, 上肢機能の維持と活用が重要と考えられた
  • 井野 光, 濱 純吉, 宮本 智, 林崎 緑, 中井 章至, 高橋 洋一
    1999 年53 巻6 号 p. 411-414
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは, 副腎転移病変を初発症状として発見され, 胸部X線検査で診断困難であった原発性肺癌の1例を経験したので報告する. 症例は61歳男性. 左側腹部痛と体重減少を訴え来院し, CEA高値も認められたため精査入院となった. 腹部CT, 腹部超音波検査にて5.0×6.5cm大の左副腎腫瘍が認められたが, 内分泌検査は正常であった. 胸部X線像では明らかな腫瘍性病変は認められなかったが, 全身Gaシンチにて左上肺野に一致して異常集積があり, CTで同部に3.5×4.0cm大の腫瘍を認めた. transbronchial lung biopsy(TBLB)を行い, 扁平上皮癌と判明. 左副腎腫瘍を摘出し, 病理検査にて肺扁平上皮癌の副腎転移と診断し, 後日に左肺上葉切除・胸壁切除・左肺動脈部分切除術を行った.
    転移性副腎腫瘍が疑われる場合, 肺癌が原発であることが多いとされており, 胸部X線像で異常陰影が明らかでなくても胸部CTなどの精査は必要であると考えられた
  • 下川 歩, 清水 幸雄, 高崎 眞弓
    1999 年53 巻6 号 p. 415-417
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    我々は腹水貯留によると思われる著明な低ナトリウム血症(104mEq/l)を呈した卵巣癌患者の周術期管理を経験した. 入院時, 意識混濁を認めたためナトリウムの補正と水制限を行い, 神経症状と血清ナトリウム濃度は回復したが, 低カリウム血症が進行した. 診断治療の目的で試験開腹術を施行した. 硬膜外麻酔で神経症状や著明な循環変動を認めることなく手術を終了した. 低ナトリウム血症の周術期管理においては進行速度と症状の有無に応じたナトリウムの補正, 体液量を把握した輸液管理, 循環系への影響を最小限にする麻酔薬, 麻酔法の選択などが重要である
  • 川口 美佐男, 平塚 任, 滝沢 博, 笹 哲彰, 大熊 雄祐, 成宮 学
    1999 年53 巻6 号 p. 418-422
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
    原発性副甲状腺機能亢進症を呈した症例について, 副甲状腺腫摘出後の骨密度の推移を二重エネルギーX線吸収測定法により観察したので報告する. 症例は22歳男性. 平成3年7月の18歳時, 体育の授業でバスケット競技中に橈尺骨骨幹部を骨折し, 続いて9月に, バイク運転中に車に接触し, 左上腕骨の外科頸を骨折した. 平成4月7月頃より全身倦怠感が増強し, さらに手指や前腕部に痛みが出現したため, 当科を受診した. 高Ca・高PTH血症が判明し, 9月に入院となった. 高Ca・低P・高ALP血症, PTH-intact高値, 尿中c-AMPの上昇, 尿細管リン酸吸収率の低下がみられ, CTにより甲状腺の右葉上部後面に径約10mmの副甲状腺腫が認められた. 201Tl-99mTcO4サブトラクションでは同部位にHot areaを認めた. これらの所見より右葉上部副甲状腺腫として摘出術を行った. 腫瘍は良性単発腺腫で, 腫瘍摘出後血清Ca・PTH濃度は速やかに正常化し, 倦怠感や上肢の痛みなどの諸症状も消失した. 以来, 現在まで約2年半, 血清Ca・PTH濃度は正常値が続いているが, この間の計5回におよぶ腰椎の骨塩定量ではいまだに正常値には達しておらず, 腺腫摘出後の骨密度の正常化には, 長期間を要することが示唆された
  • 鈴木 理志
    1999 年53 巻6 号 p. 423-425
    発行日: 1999/06/20
    公開日: 2011/10/19
    ジャーナル フリー
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