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糖尿病の一次予防, 二次予防, 三次予防への提言
谷川 博美
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1999 年 53 巻 9 号 p. 557-572

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抄録
厚生省の糖尿病調査研究事業はここ10数年来継続されてきた. そのなかの一つ, 国立病院・療養所ネットワーク共同研究は3年間に登録された未治療初診患者の臨床像について分析し, 幾つかの知見が得られた. すなわち, 未治療初診糖尿病患者の内, 基本健診が発見契機になった率が最も高く(41.6%), 他疾患受診中(39,1%), 自覚症状(17.3%)の順であった. 受療行動の動機は, 自覚症状によるものが最も多く(39.7%), 医師または家族のすすめ(22.7%), 健診(20.0%), 他疾患受診中(17.5%)の順であった. また受療行動に至るまでに平均1.9年もの時間を要していた(初年度の平均は3.3年, 最長25年であった). 初診時の糖尿病性合併症で最も高率にみられたのは糖尿病性腎症で23.4%, 次いで網膜症で14.7%であった. 耐糖能異常の発見の契機としての健診の有用性が認められる一方で, 受療行動の動機としての健診の有効性はさほど高くなかった. この結果を踏まえて, 1997年から北茂安町の基本健診事業に介入した. 調査1年目は基本健診で発見された耐糖能異常者に糖尿病に関する問診表にもとづき調査を行ったが, 調査2年目はこれに加えて基本健診受診者全員に生活習慣に関する問診を行った. 耐糖能異常の発見契機は80.0%が健診であり, 耐糖能異常者の34%に家族歴があり, 耐糖能異常の判定がその83.7%で受療行動の動機となった反面, 未受療者が13%であった. この結果は初年度の調査とほぼ同じであった. 基本健診受診者全員に行った生活習慣の問診の問診結果は, 生活習慣のうち, 正常耐糖能者と耐糖能異常者間で, 喫煙のみが後者に有意に高率であった. 平均body mass index(BMI)に有意差はなかったが, 標準体重の20%以上に相当するBMI≧26.4を示す肥満者の割合は耐糖能異常者に有意に高率であった.
これらの成績は, 生活習慣病とされる糖尿病の発症因子としては, 生活習慣よりも遺伝因子の方が, より関与している可能性を示唆するものであった.
しかし, この結果は, 生活習慣と糖尿病との関連性を否定するものではなく, 最近の糖尿病患者の増加が生活習慣の乱れに起因することは厳然たる事実である.
以上の結果や事実を踏まえ, 先人の知恵を借り, 21世紀の糖尿病の一次, 二次, 三次予防の在り方について, 若干の私見を述べたい.
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© 一般社団法人国立医療学会
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