医療
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心的トラウマと精神医学
金 吉晴
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キーワード: PTSD, トラウマ, 回復
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2003 年 57 巻 4 号 p. 231-236

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抄録
PTSDをはじめとする心的外傷関連障害が, 広範な社会的な関心の対象となっている. ペルー人質事件以後, 国立精神・神経センターでの委託費研究班が発足し, 平成13年には, 研究班としての対応マニュアルを発行した. PTSDで扱われているトラウマとは, 戦争に匹敵するような体験であり, 生理学的な側面と体験の認知ならびに意味付け的な混乱の両側面がある. 診断に際しては, 出来事の定義, 症状の記述とも, DSM-IVのような基準を参照すべきであり, とくに精神鑑定ではそれが重要である. トラウマからの一般的な回復過程を理解することは重要であり, 直後には一過性の比較的軽度の心身の変調が生じ, 一部がASDとなり, さらに一部がPTSDとなる. 遷延化する例はさらに少ない. 長期的にはアルコール・薬物依存, 自殺をはじめとする社会的な不適応が問題となる. 被害者が有責者であるかのようなスティグマは社会適応を阻害する.
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