医療
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剖検診断報告に対する遺族の要望
谷山 清己
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2006 年 60 巻 2 号 p. 106-111

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抄録

遺族から剖検の了承を得る際, 剖検診断結果をどのように伝えるかについて遺族に尋ねることはほとんどない. 遺族にとって剖検は, その行為のみでなく診断結果通知までが含まれると解釈するのが当然であり, 診断結果がどのように伝えられるかという方法に複数の選択肢があることを説明された上で剖検を承諾することを前提とすると, 剖検について十分な説明の上での承諾(インフォームド・コンセント)は不十分な状況である. 呉医療センター・中国がんセンターにおいて実施した剖検54例の遺族に対して, 剖検診断結果を伝える方法への要望を剖検直前に調査した結果, 剖検直後に受けた主治医からの説明と剖検診断報告書の内容がほぼ同様な場合は, 1) 改めての説明や報告書送付は必要ないが17例(31.5%), 2) 報告書の簡単なまとめが欲しいが15例(27.8%), 3) 報告書のコピーが欲しいが14例(25.9%), 4) 改めて説明をして欲しいが12例(22.2%)であり, その場合, a) 主治医からの説明を12例中8例(66.7%)が希望し, b) 病理医単独からの説明希望はなく, c) 主治医と病理医の両者からの説明希望が4例(33.3%)であった. 一方, 剖検直後に受けた主治医の説明と剖検診断報告書の内容に重要な隔たりが見られた場合, 4) 改めて説明をして欲しいと要望する遺族は, 23例(42.6%)であった. この要望に具体的に対応することは, 病理医にとって剖検業務の効率化につながる. また, 病理医からの説明を受けた遺族が, 生前の医療に対して納得する姿を見て, 臨床医は病理医へ感謝し, 病理医は前2者の納得と感謝に触れて剖検を行う意義を再認識する.

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© 一般社団法人国立医療学会
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