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睡眠時無呼吸症候群の診断, 治療における簡易型睡眠時ポリグラフの有用性の検討
水城 まさみ山田 博之佐藤 正男安藤 貴信山口 一彦
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2006 年 60 巻 5 号 p. 305-310

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抄録
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の診断には脳波を含めた精密な終夜ポリソムノグラフィーが重要であるが, 経済的, 人的問題で検査ができる専門施設が限られており, 早急に診断, 治療が必要な重症患者への対応が十分できていないのが現状である. 著者らは著明ないびき, 日中の高度の眠気, 家人などから明らかな睡眠中の呼吸停止を指摘されている患者に対して積極的に簡易型PSG (LS-100)を実施して診断してきた. 対象患者は男性62名(平均年齢56.4歳), 女性25名(平均年齢60.1歳)の計87名で, 簡易型PSGによる無呼吸低呼吸指数(AHI)≧30が46%であった. AHI≧20の患者についてはAHI, SPO2データ, 臨床症状の組み合わせにより診断は比較的容易にできた. 何らかの治療を導入する選択基準として, (1) AHI≧ 20あるいはAHIが5-19でも自覚症状が強い場合, (2) 無呼吸, 低呼吸に一致したSPO2の有意な低下を認める場合, (3) SPO2≧ 95%の全測定時間に対する比率が80%以下とし, これらの項目のうち1項目でも満たす場合は, 本人の希望も参考にして治療導入を決定した. 治療はAHI≧ 20以上では原則として経鼻的持続性気道陽圧呼吸(nCPAP)を導入した. 3ヵ月以上治療を継続した患者では86%で臨床症状の改善を認め, さらに治療経過中に効果判定のためにnCPAP装着下で簡易型PSGを実施した10名では, AHI, SPO2データの有意な改善効果が認められ, nCPAPのコンプライアンスデータのAHIともよい一致率が得られた. 以上より, 簡易型PSGはとくに重症のOSAS患者の早期診断と治療方針決定さらには治療効果判定において, 装置の特徴や欠点を熟知して使用すれば十分に活用できるものであり, 近年増加の著しいOSAS患者への貢献度は大きいものと考える.
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© 一般社団法人国立医療学会
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