抄録
電子写真は,発明以来約70年にわたり,常にオフィス業務における記録技術の主流として発展を遂げてきた.本稿では,情報のデジタル化,カラー化という重大な変換期おいても,電子写真が淘汰されずに勝ち残れた要因が何なのかを技術的,歴史的に振り返る.電子写真は,光導電現象を利用して,原稿画像情報を普通紙上の複写画像情報として再生する物理量変換プロセスであり,その変換過程の巧妙さに多くの技術者が魅了され,数多くの改良発明が生みだされた.発展の歴史は,(1) カートリッジ方式の考案,(2) デジタル化への対応,(3) カラー化,(4) POD (Print on Demand) 分野への進出に代表され,オフィス業務の効率化を主軸として,個人用途から生産設備産業に至るまでの事業の拡大がなされてきた.また,乾式現像法と並行して,液体現像法も今日に至るまで存続し,特徴的発展を遂げた.今後,情報の取り扱いが電子メディアへと急速に移行している中で,紙出力の価値の変化に伴い新たな領域が開拓できるか,電子写真における技術開発への期待は大きい.