日本画像学会誌
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生物の多様性に学ぶ新世代バイオミメティクス
下村 政嗣
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2014 年 53 巻 3 号 p. 192-198

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抄録
生物が有する多様性は,長い進化·適応の結果であり,壮大な“コンビナトリアル·ケミストリー”の結果である.それは「生物の技術体系」とも言うべき,「人間の技術体系」とは異なる「生産プロセス」「作動原理」「システム制御」によって獲得されてきたものである.とりわけ,昆虫や植物の体表面に形成された“サブセルラー·サイズ構造”であるナノ·マイクロ構造は特徴的な機能を有しており,その形成過程と機能発現機構をもたらした「生物の技術体系」を明らかにすることは,「人間の技術体系」が内包し解決すべき喫緊の課題である,環境·資源ならびにエネルギー問題の解決に寄与するパラダイムシフトをもたらす.自然史学,生物学,農学,材料科学,機械工学,情報科学,環境科学などの学際連携により,環境政策·包括的技術ガバナンスの観点から「生物多様性」に学び「人間の叡智」を組み合わせた技術体系としての「生物規範工学」を提案する.技術革新と新産業育成のプラットフォームとなる「バイオミメティクス·データベース」を構築するとともに,国際標準化に対応し,生物学と工学に通じた人材を育成することが,我が国の国際競争力において不可欠である.
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© 2014 一般社団法人 日本画像学会
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