近年,有機電界発光素子 (有機EL) や有機太陽電池など,有機半導体の多層膜を用いた光電子デバイスの研究,開発が盛んに行われている.これらのデバイスの機能の発現には,デバイスに内在する様々な界面における物理現象が関わっている.本稿では,そのような有機半導体が関連する界面の成り立ちを,微視的な観点から解明しようとする基礎研究の例を紹介する.まず,電極と有機半導体との界面は,微視的には,金属表面に吸着した有機分子の系と考えることができる.本稿では,金属表面と,そこに吸着した有機分子との間の相互作用によって生じる界面の特異な電子構造を,表面科学的な手法を用いて調べた研究について紹介する.また,有機太陽電池に内在する性質の異なる二種類の有機半導体 (ドナー,アクセプター) の薄膜間の界面の構造と電子構造が,どのように太陽電池のエネルギー変換効率に影響するかを調べた研究を紹介する.これらの研究からは,界面の分子レベルの性質が,デバイスの性能といったマクロな性質に大きな影響を与えていることが分かる.