日本画像学会誌
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58 巻, 2 号
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日本画像学会誌のオープンアクセス化と論文掲載料の改定について
日本画像学会ビジョン2030
論文
  • 平出 智大, 後藤 寛
    2019 年58 巻2 号 p. 200-204
    発行日: 2019/04/10
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    白色インクには色材として一般的に酸化チタンが用いられる.しかし,高比重なためインク中で沈降する.また,低比重色材として中空樹脂粒子を用いると,非浸透性の印字媒体では加熱乾燥時に中空粒子の形状を維持できず,白色隠蔽性が低下するという課題がある.上記課題に対し,低比重かつ加熱乾燥に耐用可能な色材として無機中空粒子である中空シリカに着目した.従来報告されている中空シリカは,低い白色隠蔽性や,分散時に粒子が割れてしまう等の課題を有している.本研究では,中空シリカの合成法を開発することにより,中空構造を維持したままインク中に分散可能とし,粒子径制御を行うことで低付着量条件ながら高い白色隠蔽性が得られることを見出した.さらに,中空樹脂粒子の課題であった耐熱性/耐溶剤性に優れ,酸化チタンと比較して低沈降性であることを示した.

  • 竹田 直樹, 常安 翔太, 佐藤 利文
    2019 年58 巻2 号 p. 205-210
    発行日: 2019/04/10
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    分散型EL (Electroluminescence) は,真空やプラズマ等の半導体プロセスを使用せずに,印刷プロセスだけで平面発光素子を作製することができる.その素子構造は平面電極間に誘電体を積層するため,コンデンサに似た特性を有し,交流電圧印加時には誘電損失が発生すると考えられる.本研究では,紙基板上に作製した分散型ELにおける誘電損失の影響を明らかにするため,電流,輝度ならびにtanδの周波数依存性を測定した.その結果,受容層の有無に関わらず,周波数の上昇に伴う電流,輝度の変化は線形ではないことが分かった.また,tanδが大きな値を示した周波数領域では,電流の増加量は小さくなった.これらのことより,誘電損失の周波数特性は電流および輝度の周波数特性に大きく影響を与えていることが明らかとなった.

Imaging Today
  • 堀内 隆彦, 田中 緑
    2019 年58 巻2 号 p. 212-218
    発行日: 2019/04/10
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    物体から知覚される光沢感,透明感,粒状感などの「質感」は,一般にデジタルカラー画像として再現した際に失われることも多い.本解説では,実物体と再現画像の間で変化する質感に関して,著者らが調査した結果を紹介する.さらに,画像再現によって失われる物体の表面質感に着目し,物体表面の質感を強調するアルゴリズムPuRetを概説する.物体表面の質感に着目した際の瞳孔のふるまいに注目したところ,質感に注意して観察することが瞳孔収縮を引き起こすことを発見し,この知見を網膜応答特性に適用することによって,質感強調アルゴリズムPuRetを開発した.PuRetを現行のデジタルカラー画像に適用することによって,画像から知覚される物体の質感を強調した画像を生成できることを示す.

  • 津村 徳道, 吉井 淳貴
    2019 年58 巻2 号 p. 219-225
    発行日: 2019/04/10
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究では,ユーザが商品画像を閲覧する際に,デバイスの違いによって商品画像の見えが変化しないような,いわゆるデバイスインディペンデントな画像再現手法を提案する.画像の見えに関係するものは,色と質感に大きく分けられる.画像の色に関しては様々な研究がなされており,デバイスインディペンデントな色再現に関しては,インターネットの色再現規格sRGB等が用いられている.一方,画像の質感に関しての研究は少なく,質感を正確にディスプレイに再現することはほとんど議論されていない.そこで,本研究ではデバイスインディペンデントな質感再現技術の基礎技術の構築に関する研究を行った,等粒状感空間を作成し,最大輝度値の異なるディスプレイ間で等しい粒状感を再現することができた.

  • 荒井 航, 金子 賢史
    2019 年58 巻2 号 p. 226-232
    発行日: 2019/04/10
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    インクジェットプリンターが産業用途に使われるようになってから久しく,カラーインクを白い用紙に印刷するだけでは,「新しさや違い」が得られなくなっている.「新しさや違い」=高付加価値を生み出すためにはカラー情報以上のものを付加すること,言い換えると一目見た時に「おやっ?」と思わせる新しいファクターが必要不可欠であった.

    高付加価値印刷はその様な状況を打開する画期的な技術であり,インクジェットプリンターでは主に特殊なインクを使用した様々な手法が各社から提案されている.高付加価値印刷の発展により,従来の平坦な印刷が立体的になる,高級感を持つ,魅力的な表現に変わるなど,ワンランクアップした質感の表現が可能になる.

    本稿では,高付加価値印刷を生み出すインクジェットプリント技術の変遷と最新動向を,弊社での例を挙げながら解説する.

  • 棟安 実治
    2019 年58 巻2 号 p. 233-241
    発行日: 2019/04/10
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    近年,雑誌や広告などの印刷物から携帯端末を用いてURLなどの情報を取得するための手段として,2次元コードの利用が一般的である.特にQRコードを用いることが多く,QRコードは印刷物だけではなく,ディジタルサイネージなどでも用いられるようになっている.しかし,これらのコードは一般に白黒の文様であり,また専用のスペースも必要とするため,印刷物の意匠を損ねる場合も多い.そのため,電子透かしを基礎とする,印刷物に対して違和感のない手段が提案され関心を集めている.しかし技術的な観点からは,印刷・撮影の影響について十分考慮する必要がある.本稿では,そのような印刷物からスマートフォンなどの携帯端末を用いて,情報を取得する手法の概要について解説する.ここでは,このような技術に要求される条件について述べ,我々が提案している手法も含めていくつかの実現手法について紹介する.

  • 岸上 郁子
    2019 年58 巻2 号 p. 242-245
    発行日: 2019/04/10
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル フリー

    印刷物から情報を得る方法としてバーコードが発明され物品管理に使われている.これにより物流管理が画期的に改善をされた.その後,デンソーウエーブが開発したQRコードは,バーコードの容量を増やすため,そして読取を速くするという意図で作られた.現在では,物流管理だけではなく,携帯電話で読み取れるようになり,オープンソースにしているために,様々なところで情報を得るのに使われている.

    これらの二つのコードに対して,見えないコード「スクリーンコード」を新たに開発した.見えないことのメリットは,秘匿性につきる.つまり誰にもわからないように情報を付加するセキュリティ強化にもっとも適している.

    見ないことのデメリットは,そこにあるということがわからないこと.しかしこのデメリットは見えるようにすることも可能なので,解決はできると考える.

    2016年からスマートフォンでの読取も開発し,QRコードと比較されるようになった.今回は,特にQRコードとの住み分けについて考察したい.

Imaging Highlight
  • 金井 要
    2019 年58 巻2 号 p. 246-256
    発行日: 2019/04/10
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル 認証あり

    近年,有機電界発光素子 (有機EL) や有機太陽電池など,有機半導体の多層膜を用いた光電子デバイスの研究,開発が盛んに行われている.これらのデバイスの機能の発現には,デバイスに内在する様々な界面における物理現象が関わっている.本稿では,そのような有機半導体が関連する界面の成り立ちを,微視的な観点から解明しようとする基礎研究の例を紹介する.まず,電極と有機半導体との界面は,微視的には,金属表面に吸着した有機分子の系と考えることができる.本稿では,金属表面と,そこに吸着した有機分子との間の相互作用によって生じる界面の特異な電子構造を,表面科学的な手法を用いて調べた研究について紹介する.また,有機太陽電池に内在する性質の異なる二種類の有機半導体 (ドナー,アクセプター) の薄膜間の界面の構造と電子構造が,どのように太陽電池のエネルギー変換効率に影響するかを調べた研究を紹介する.これらの研究からは,界面の分子レベルの性質が,デバイスの性能といったマクロな性質に大きな影響を与えていることが分かる.

教育講座
  • 宮沢 靖幸
    2019 年58 巻2 号 p. 257-260
    発行日: 2019/04/10
    公開日: 2019/04/10
    ジャーナル 認証あり

    前回に続き,波長分散型元素分析装置 (EPMA) を用いた金属材料ミクロ組織の元素分析法について解説した.

    最重要部品であるX線分光器の取り付け位置について詳細に解説した.また,分析試験片表面の微細な段差や凹凸が分析結果に及ぼす影響について解説した.分析試験片表面に露出した接合界面とX線分光器との位置関係が,EPMAによる元素分析結果に及ぼす影響について解説した.これらを理解した上で分析試験片を作製する事が良質な分析結果を得る上で重要な事を示した.

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