2021 年 60 巻 1 号 p. 74-78
富士ゼロックス(株)は2019年に11000 Inkjet Pressを市場導入した.本装置は,2013年にトランザクション市場向けに発売した1400 Inkjet Continuous Color Feed Printing Systemの性能を商業印刷市場向けに高めたカラーインクジェット連帳機であり,商業印刷市場で多く使用されるオフセット印刷用紙に,1200×1200dpiの画像を速度80m/minで,前処理無く高品位に印刷が可能である.
オフセット印刷用紙はインクの浸透性が低いため,色間の滲み (bleeding),モトリング (mottling,まだら),スジ (streaks),さらには画像剥がれといった画質欠陥が発生しやすい.さらに,用紙の構造上,カール (curl,湾曲) やコックリング (cockling,波打ち) といった用紙の変形が顕在化しやすい.このため,インクジェットで高品位な印刷を実現するためには,多くの課題が発生する.本報では,11000IJPの製品概要を紹介し,続いてオフセット印刷用紙への印刷で発生する課題を解決するために本装置に搭載した主要技術について説明する.