2021 年 60 巻 5 号 p. 486-496
タマムシのように自然界には金属のような輝き持つ色の生物が存在している.そのような色は光の波長サイズの微細構造によって生み出されるため,色素による色とは区別して,構造色と呼ばれている.構造色を生み出す微細構造には,薄膜が積層した多層膜構造,三次元的に構造が周期的なフォトニック結晶など様々な形状が知られている.構造の繰り返し周期が光の波長サイズであるとき,反射あるいは散乱された光は特定の波長で強め合う干渉を起こすため,その波長に対応した色を呈する.しかし,自然界の生物が持つ構造色は単純な干渉だけではなく,さまざまな工夫を併用し,鮮やかな色を生み出していることが分かってきた.本稿ではいくつかの微細構造についてその発色の仕組みを解説し,生物の具体例を紹介する.また,構造色を持つ人工的な材料として,フォトニックボールと呼ばれるコロイド粒子凝集体の発色現象について解説する.