品質工学は田口玄一博士 (1924~2012) によって構築された技術開発,製品開発の手法であり,その特徴はモノづくり上流における基本機能の改善にある.基本機能とは製品やシステムに要求される根本的な働き,基本原理であり,多くの品質問題は基本機能のばらつきによって発生する.したがって,開発初期の段階で基本機能を改善し,安定化させることができれば,市場での品質問題は未然に防止されるとともに,開発業務の効率も大幅に向上する.本文は,品質工学による技術開発の進め方を説明し,実験にコンピュータシミュレーション (CAE;computer aided engineering) を活用する場合の効果と留意点を,実施例を交えて紹介するものである.品質工学とCAEを融合することで,技術開発の速度は飛躍的に向上し,コストは大幅に削減される.