日本画像学会誌
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61 巻, 2 号
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論文
  • 岩本 頌平, 兒玉 学, 原田 祥宏, 加藤 弘一, 門永 雅史, 伏信 一慶, 平井 秀一郎
    2022 年 61 巻 2 号 p. 98-104
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2022/04/10
    ジャーナル フリー

    インクジェットプリンティングにおけるインクの浸透は画質ならびに乾燥効率に関与することから,浸透挙動の把握は重要である.本研究では,コート層の構造 (コート層の有無と層数と厚さ) による液滴の浸透挙動の解明を目的として,コート層のない紙1種とコート層のある紙3種に対して,X線CT (computed tomography) による非破壊浸透域計測,SEM (scanning electron microscope) 断面観察による紙構造計測,浸透の準2次元数値解析を実施した.臭化カリウムを溶質とする水性インクを用いることで,液滴の浸透域のX線CT測定を可能とし,得られた液滴浸透域と断面SEMにより計測された紙構造を比較した.その結果,コート層の有無,コート層の層数・空隙径・厚さが浸透に影響することが明らかとなり,特にコート層が2層構造をなす場合,表側コート層にのみ液滴が浸透することが明らかとなった.また数値解析の結果,この表側コート層への浸透は,表側コート層の細孔径が裏側コート層の細孔径よりも小さいことが原因であることが示された.

Imaging Today
  • 門永 雅史
    2022 年 61 巻 2 号 p. 106-113
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2022/04/10
    ジャーナル フリー

    本稿はインクジェット液滴の蒸発とメディアへの浸透現象に関連する,従来の研究事例の紹介を行う.メディア上に着弾した液滴は,蒸発と浸透によって乾燥し画像を形成する.これらは様々な要因が関係する物質輸送現象であり,可視化実験,理論解析,シミュレーションなしには理解を深めることはできない.蒸発に関しては,多くの研究によって,蒸気拡散が支配的であること,潜熱による温度低下,液滴内のMarangoni流れ,外気流の影響も重要であることが報告されている.浸透に関しては,Lucas Washbernでの解析が中心である.顔料インクでは固形分の影響もあり,濾過モデルを考慮した式が提案されている.しかしながら,顔料を考慮した研究はまだ少ないようである.代表的な,蒸発,浸透の物理モデル,理論的な解析事例,数値計算によるシミュレーション結果を紹介したい.

  • 門永 雅史
    2022 年 61 巻 2 号 p. 114-120
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2022/04/10
    ジャーナル フリー

    本稿は東京工業大のリコー次世代デジタルプリンティング技術共同研究講座で行われている,インクジェット液滴の蒸発とメディアへの浸透解析についての紹介である.インクジェットの原理はシンプルであるが,メディア上に着弾した液滴が乾燥する過程は,様々な要因が関係する物質輸送現象であり非常に複雑である.実験だけでなく,理論解析やシミュレーションなしには理解を深めることはできない.我々は蒸発,浸透,内部流れ,濡れ性に関する研究を行ない,2020年から2021年にかけて日本画像学会を中心に研究成果を発表してきた.現在も継続して研究中ではあるが,これまでに行ってきたインクジェット液滴の蒸発とコート紙への浸透に関する研究の一部を紹介する.

  • 丸山 泰弘, 吉元 俊二, 坂口 雅敏
    2022 年 61 巻 2 号 p. 121-126
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2022/04/10
    ジャーナル フリー

    電子写真技術において現像器はトナーを帯電させ感光体上の静電潜像まで移動させるという機能を担うため,画質への寄与率が高く製品品質に及ぼす影響が大きい.しかしながら,トナーは粉体であり諸特性は分布を持つためトナー挙動の理論化は難しく,印刷を繰り返すことで分布が変化するため開発に多くの人手と時間を要している.本報告では,現像器開発の効率化を目指し,設計パラメータを用いた現像器のモデルについて紹介する.このモデルでは,現像ローラ周りの各機能がモデル上で繋がれ,トナー諸特性の分布が導入されているため,諸特性の分布変化による機能の低下を予測可能にする.さらに,それぞれの機能毎に適したシミュレーション技術と組み合わせることで,より製品設計で活用しやすいモデルへと拡張することができる.

  • 芝野 広志
    2022 年 61 巻 2 号 p. 127-132
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2022/04/10
    ジャーナル フリー

    品質工学は田口玄一博士 (1924~2012) によって構築された技術開発,製品開発の手法であり,その特徴はモノづくり上流における基本機能の改善にある.基本機能とは製品やシステムに要求される根本的な働き,基本原理であり,多くの品質問題は基本機能のばらつきによって発生する.したがって,開発初期の段階で基本機能を改善し,安定化させることができれば,市場での品質問題は未然に防止されるとともに,開発業務の効率も大幅に向上する.本文は,品質工学による技術開発の進め方を説明し,実験にコンピュータシミュレーション (CAE;computer aided engineering) を活用する場合の効果と留意点を,実施例を交えて紹介するものである.品質工学とCAEを融合することで,技術開発の速度は飛躍的に向上し,コストは大幅に削減される.

  • 山崎 徹
    2022 年 61 巻 2 号 p. 133-141
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2022/04/10
    ジャーナル フリー

    環境の変化が激しい今,モノ作りはますますヒトに対する価値のあるモノ・コト (さらにはシステム) であることが必須である.この開発には高効率と低コストもまた必須である.これらを達成するためには,設計の早い段階にて,様々な性能を適正化 (多性能適正化) することがキーとなる.また,システムとして,全体を俯瞰すること,であるからこそ共創すること,も極めて重要なマインドとなる.著者は,企業,大学と連携し,「形で考えないNVH (noise, vibration and harshness) モデル研究会」を2018年10月に発足し,多性能適正化のために全体俯瞰・共創を実現する活動を進めている.「形で考えないモデル」は,設計空間の拡大,新発想の創出,多性能適正化を意図し,機能を表す数式やデータなどで記述されるものである.そのモデル開発は,学が架け橋となり産産学で行う.開発したモデルで全体をどのように俯瞰し (つなぎ),どのように多性能適正化を実現するか (活用法) を,モデルを介して連携し,共創している.その取り組みの一例として,広帯域の振動問題であるロードノイズに関する形で考えないモデルを解説する.

  • 押山 智寛, 奥山 倫弘, 池田 祐子, 中澤 幸仁
    2022 年 61 巻 2 号 p. 142-149
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2022/04/10
    ジャーナル フリー

    我々は,マテリアルズ・インフォマティクス (materials informatics, MI) をポリプロピレン複合材料の弾性率の予測モデルの構築に適用した.MIの適用では,材料特性データを用いずに,高分子複合材料を構成するポリプロピレン,フィラー及び添加剤の各銘柄を0と1で組み合わせた記述子,フィラー及び添加剤は含有率を記述子とすることで説明変数を設定した.このように設定した説明変数を用いて,PLS (partial least square) 回帰により弾性率の予測モデルを構築した.

    構築した予測モデルを検証するために,新たに選択したポリプロピレン複合材料の処方に対して弾性率を測定して実測値と予測値を比較した.フィラー含有率の高い複合材料については,非線形のSVR (support vector regression) 回帰を適用することにより,予測精度を向上させた.この予測モデルは,所望の弾性率を得るためのポリプロピレン,フィラー,添加剤の適切な組み合わせを特定するために有用である.

  • 斎藤 浩一
    2022 年 61 巻 2 号 p. 150-156
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2022/04/10
    ジャーナル フリー

    我々は,お客様に働きやすい環境を提供するメカトロニクス製品をタイムリーに提供し続けることで社会に貢献していこうと考えている.これを実現するためには従来の制御ソフトウエアの設計手法では達成できず,新しい手法を用いた自動設計技術の獲得が必須であると考える.そこで,強化学習を採用し,検証を行った.

    強化学習は,どのような動作を行ったらよいか分からない状態で,試行錯誤を繰り返して制御対象の状態に応じた最適な動作を決定し制御内容を構築していくため,実機を用いて学習を行うと実機を破損してしまう可能性がある.そのため,今回の検討では実機同等の振る舞いをするシミュレーターを用いて検証を行った.しかし,今回用いたシミュレーターでは実機が持つ不確実性を表現できていないため,実機では正常に動作させることができない可能性がある.この課題に対し,どのようにシミュレーターを用いて生成した学習モデルを実機で動作できるようにしていくかの検討案を紹介する.

  • 横山 優樹
    2022 年 61 巻 2 号 p. 157-165
    発行日: 2022/04/10
    公開日: 2022/04/10
    ジャーナル フリー

    2019年,立体の基本構成要素であるボクセルの集合として内部構造を含めて立体形状を表現し,ものづくりで生じる様々なデータ処理やデータ変換工程間で一貫して使用することのできる3DデータフォーマットFAV (fabricatable voxel) がJIS (日本工業規格) として登録された.FAVは個々のボクセルが様々な属性情報を保持できること,ボクセルそのものを有限要素メッシュとみなしてそのままシミュレーションへ適用可能なこと,さらにはシミュレーションを行った結果を立体形状の設計に忠実に反映させることが可能であることなどから,シミュレーションとの親和性が高い.本稿では,FAVで拡大するものづくりのシミュレーション活用に関する近年の技術動向や成果とともに,その最新の取り組みとして,FAVの属性情報を活用したパターン構造の最適設計技術と,本技術を適用した事例について解説する.

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