円筒壁に囲まれた溶液膜の乾燥過程を数値解析し,溶質濃度差に起因して発生するマランゴニ (Marangoni) 対流が自由表面の変形に及ぼす影響を検討した.マランゴニ対流が生じない条件では,自由表面は球冠を保ちながら乾燥が進行する.その結果,自由表面がまず基板底面中心に達し,引き続いて中心から壁面に向かって薄膜が形成される.一方,マランゴニ対流が生じる場合,マランゴニ力が自由表面を変形させ,中心部で平坦化する.液体積が20%まで減った時点で,壁面近くで窪みが発生する.膜の周辺に窪みが発生することは既報の実験で観察されている.解析はこの窪みがマランゴニ変形に由来することを示唆している.さらに,マランゴニ変形によって生じるバルク流れの発生機構を考察した.