2024 年 63 巻 2 号 p. 185-193
本稿では熱電変換材料としての単層カーボンナノチューブ膜の特徴や性能の引き出し方を解説する.最近環境発電 (Energy harvesting) への応用を目指したカーボンナノチューブの利用が検討されている.カーボンナノチューブを用いると良くも悪くもそれなりの発電性能が得られるため,学理面よりも応用志向の報告が多い.また材料の複雑性に起因して,主導原理の抽出が容易ではなく,研究の見通しが難しい.本稿ではまず基本に立ち返り,単層カーボンナノチューブの熱電物性にみられる構造物性相関の解明に向けた取り組みを紹介する.その後,化学ドーピングに焦点を当て,その高度化に求められる主導原理を提案し,これを利用した筆者らの最近の研究事例を紹介する.