インクジェットプリントにおける微細多孔構造への浸透のX線CT計測

抄録

インクジェットプリントにおいて浸透工程が画質や生産性に直結することから，インクの浸透理論に基づく浸透制御は高性能印刷にあたり重要である．しかし，既存の浸透理論は浸透領域を理想的な皿型とする仮定に基づいており，実際の浸透形状とは異なる可能性がある．そこで本研究では，浸透領域形状の特性解明と浸透理論の高精度化を目的に，X線CT (computed tomography) を用いてインクの浸透領域を非破壊で三次元計測した．特に本研究ではメディアの空隙径と親水性の強弱が浸透形状に与える影響について検討した．その結果，メディアの弱い親水性は浸透領域底部に凹凸を誘発することが明らかになった．この凹凸は，浸透速度が低下したことで生じたキャピラリーフィンガリングに起因するものである．また，この凹凸により，皿型浸透とは異なり，厚さ方向に浸透面積が顕著に減少する．この浸透面積の減少は浸透確率を導入することでモデル化が可能であり，親水性の増加に伴い浸透確率は大きくなり，空隙径には依存しない．