抄録
本研究の目的は、大学での心理学授業実践を通したスピリチュアル・ヘルス実現のメカニズムを提出することである。スピリチュアル・ヘルス実現を目的として、身体的・心理的・社会的・スピリチュアルな、人間存在すべてのレベルに働きかける統合的な教育プログラムを行った。授業評価は、参与観察・感想シート分析・半構造化面接と、SBAS-TESTの試行によった。分析結果は、超越的次元へのつながりに対する気づき・意志・喜びに基づくスピリチュアル・ヘルス実現を示した。これより、スピリチュアル・ヘルス3因子モデルで説明されるスピリチュアル・ヘルス実現メカニズムが明らかになった。すなわち1)気づきと他の二つの要素(意志・喜び)が共時的に実現する。そして2)心理的・超越的次元の2段階の気づきを前提としながら、心理的次元から超越次元へ向かう意志の働き(上昇)と、超越次元から心理的次元に降りてくる喜び(下降)との振動運動によりスピリチュアル・ヘルスが実現するというものである。以上よりスピリチュアル・ヘルス実現は、意識のホラーキーな進化におけるダイナミックな過程とモデル化された。