2023 年 99 巻 1 号 p. 1-16
本研究では,離職意思に影響を与えるワーク・エンゲイジメントに焦点を当て,ワーク・エンゲイジメントの高い職員が認識している仕事の資源の特徴を明らかにした。また,この結果を基に離職率低減に向けた課題と対策について考察を行った。研究対象者は,訪問看護ステーションに勤務する保健師・看護師,理学療法士・作業療法士の64名であった。研究対象者を全対象者,30歳代以下,40歳代以上,専門職経験年数9年以下,専門職経験年数10年以上,保健師・看護師,理学療法士・作業療法士ごとに日本語版ユトレヒト・ワーク・エンゲイジメントの点が平均値よりも高い群と低い群に分類し,対象者らが認識する仕事の資源の各項目を比較した。研究の結果,全対象者ではワーク・エンゲイジメントの高い者で作業レベル,部署レベル,事業場レベルのほぼ全ての項目が有意に高く,焦点を絞らない全般的な対策を要することが示唆された。年齢別の分析ではワーク・エンゲイジメントが低い30歳代以下の者で,作業レベルの項目が全て低く,この点において不安を抱かないような支援が必要であると考えられた。専門職経験年数別の比較では,ワーク・エンゲイジメントの高い経験年数9年以下の者は個人の働きがいや価値観を重視する項目が高かったが,10年以上の者は上司との関係性や評価に関する項目が高く,明らかな差異がみられた。また,職種別の比較では理学療法士・作業療法士で事業場レベルの項目に多く有意差が見られ,事業場レベルでの承認がワーク・エンゲイジメントに影響する可能性を示唆した。ワーク・エンゲイジメントに焦点を当てた離職対策を行うにあたっては,これらの点に配慮する必要があると考えられる。