2012 年 5 巻 p. 60-78
本稿は、2000年代以降に出版された在日フィリピン人研究をレビューし、今後の研究課題を索出する試みである。近年、国勢調査データを使った在日外国人の社会・経済的地位に関する比較研究が行われている[是川 2012; 大曲ほか 2011a, 2011b]。これらによると、他国籍の外国人と比較してフィリピン人は人的資本が乏しく、日本国内で社会・経済的な上昇手段がほぼ閉ざされ、困難を抱えた女性の集団と特徴づけられる。この現実を前に、改めて在日フィリピン人に関する既存研究を読むと、エスニック・コミュニティ内部の解明は進み、地域社会への着目、子どもの教育に関する研究は進んだものの、1990年代にあった社会運動論的問題意識(興行労働者へのネガティブなラベリングを克服する等)が弱まり、在日フィリピン人の貧困や子どもの 低学力、階層の再生産といった構造的な問題を「問題」として直視しえなかったことが指摘できる。今後、在日フィリピン人社会は高齢化の時代を迎える。この時期に必要とされる研究を提示したい。